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想い出と、いまを重ねて――ホテル大雪を拠点にスキーで過ごす 癒しのひととき 山崎 修
アルベールビルオリンピック〈モーグル〉日本代表・山崎石材工業会社 代表取締役社長

若かりし頃の雄姿

あの頃の風景が、ふいに蘇る――。
1980年代、スキーブーム真っ只中。私はモーグル選手として、日本人初のオリンピック出場を目指し、冬が近づくたびに胸を高鳴らせていた。毎年11月3日、層雲峡・黒岳スキー場のオープン日を心待ちにしていたのも、その頃からの恒例だ。
朝、目覚めると外から聞こえてくる「シャンシャンシャン」というタイヤのチェーンの音。あの音が、私の目を覚まし、心をスキーの世界へと引き戻す。まだ薄暗い中、白銀の黒岳を目指してホテルを出発するときの、あの気持ちが昂る感覚は、今も鮮明に覚えている。
当時、大学のスキー合宿に紛れ込むように泊まったホテル大雪。お昼に用意していただいた握り飯が、極寒の中での厳しいトレーニング後には何よりのご褒美だった。そして、滑り終えた後に迎えてくれるのは、かけ流しの温泉。冷えた体を包み込むそのぬくもりに、心までほぐれた。

あれから時は流れ、今はホームゲレンデをカムイスキーリンクス(旭川)に移し、娘たちと共にスキーを楽しむ日々。

カムイスキーリンクスで娘とスキーを楽しんだのち、ホテル大雪にチェックイン

今シーズンの締めくくりに、家族でカムイスキーリンクスでのスキーを楽しんだ後、久々の層雲峡を訪れた。リニューアルされた「ホテル大雪 ONSEN & CANYON RESORT」は、どこか懐かしさを残しながらも洗練された趣に包まれていた。
以前と変わらずかけ流しの温泉は健在。部屋のお風呂に身を沈めれば、お湯がざぶーんと湯船から溢れ出し、その豪快さすらも贅沢に感じられる。

部屋風呂でビール片手に至福のひととき

サウナは、現役時代にはメンテナンスの一環だったが、今は癒しを求めてじっくりと味わう時間となった。水風呂との「温冷交代浴」は、いつまでも変わらぬ心地よさだ。

7F「大雪乃湯」にあるサウナ(ホテルHPより)

夕食のバイキングも驚きの進化を遂げていた。合宿時代の食事とは比べものにならないクオリティ。目にも楽しく、ついつい皿に盛り過ぎ、食べ過ぎてしまうのも嬉しい誤算だった。

家族でバイキングを楽しむ(今回、長女は都合がつかず不参加)

翌朝、ホテル大雪を出てすぐの場所にある、りんゆう観光さんの黒岳ロープウェイに乗り、約三十数年ぶりの黒岳スキー場へ。ロープウェイからの壮大な景観が素晴らしい。合宿で来ていたときには頭の中はスキーのことでいっぱいで、景色など見ていなかったので、まるで初めて見た景色のような気がした。

ロープウェイの中からの眺め

残念ながら強風の影響でリフトは止まっていたが、山頂にこの時期でも積もる最良のパウダースノーは、さすが“ヌタプカウシュペ”(アイヌ語で大雪山を意味)。身体で覚えている雪の感触に、思わず笑みがこぼれた。この季節にまた戻ってくる予感がしている。

リフト乗り場から黒岳を望む
ロープウェイ黒岳駅にて
大雪山黒岳資料館にて

ホテル大雪――それは、青春の情熱を包み込んだ思い出の場所であり、今は家族とともに癒しを感じる温泉宿として、人生の節目節目に寄り添ってくれている。かつての夢と、いまの幸せが重なる場所。これからも、何度でも足を運びたくなる、大切な“ふるさと”だ。

黒岳にて。赤いスキーは還暦のお祝いに友人たちがプレゼントしてくれたもの。

*山崎氏からのメッセージ:

初めての海外遠征は、スイス。眼前に広がるそびえ立つ渓谷を前に、思わず「層雲峡だ!層雲峡だ!」と、若き日の私は胸を高鳴らせながら叫んでいました。あのとき心を打たれた雄大な風景が、今も私の原点です。今では、娘たちもスキーが大好きで、スキーは私たち家族をつなぐ大切な絆のひとつになっています。
「家族の絆」といえば、本業である石材店の使命も、まさにそこにあります。私たちは、お墓を“集う場所”と考えています。先祖と子孫が想いを通わせ、人生の物語を語り継ぐ場所。そんな祈りのかたちを、一つひとつカスタムデザインでおつくりしています。
さらに、時代に合わせて、どこにいてもご先祖様と繋がれる「永久デジタル墓」のサービスも展開しています。家族が時を超えて心を通わせる――そんな新しい供養のかたちを、これからも育んでいきたいと思います。

山崎 修 アルベールビルオリンピック〈モーグル〉日本代表・山崎石材工業会社 代表取締役社長
1980年代から日本のフリースタイルスキーの第一人者として活躍。全日本フリースタイルスキー選手権大会モーグル優勝3回。1992年「アルベールビル」(仏)オリンピックに出場。日本人として初めてモーグル競技に出場した。引退後はプロスキーヤーとして活躍。1998年⾧野オリンピックでは解説者として実況中継を担当。現在は家業である山崎石材工業株式会社の代表取締役社長(5代目)を務める。